<運営>
SGH教員研修
SGH Teachers' Seminar
2016年7月5日
「グローバル化した世界における人権・労働・環境の課題」に向き合える市民育成のための教育というタイトルで、SGHを通してめざす教育像について認識を深めるための研修を行いました。講師は、アジア・太平洋人権情報センター会長で、元国際連合人権高等弁務官事務所人権担当官の白石理氏をお迎えしました。
当日用意していただいたプレゼンテーションスライド資料の内容を本校の担当者が再構成したものを紹介します。
第1部では「グローバル化と国際人権」について、第2部では「グローバル市民育成のための教育の目標とそのために必要となる具体的な能力」について述べられています。結論部分では、「将来仕事として、新しい課題に対して、事実を分析し、論理的に、他者と協働して、創造的な解決策を生み出していけるようになる能力」を、「国際人権の実現という普遍的価値のために発揮することを自らの幸せと考える」という人間像が示されています。
このような人物が育つための教育を、各教科の授業・課題研究・HR・課外活動を通して実現していくのが、われわれ教員の仕事と言えます。
(1)グローバル化と国際人権
- 「グローバル(GLOBAL)」←GLOBE
一つの国の領域、地域を超える。
国、文化、人種、宗教などのちがいを超える。
→差別、偏見の除去 という方向性- グローバル」と「国際」は、同じではない
Global:国の垣根を越えて
International(国際):国(Nation State)の枠組み前提 -
グローバル化は世界の流れ
人、物、富(通貨など)の国境を越えた移動
企業活動が国境を越えておこなわれる。
外国に出ていく人材/外国から入ってくる人材
- グローバル」と「国際」は、同じではない
- グローバル課題
- 一国の枠組みでは、対処し解決できない問題 →グローバルな取り組みが必要となる。
- 「グローバル課題」としての平和、安全保障、移民・難民、貧困、食糧問題、衛生、自然環境保護、開発、資源エネルギー問題など
- プラスのグローバル化もある
- 多様性の受容と独自性の尊重 −ダイバーシティ。
- 普遍的価値の承認と支持 −平和、人権、社会正義、公平、持続可能性
- 国際連合を例として「グローバル」を考える グローバルな目標を掲げる国際連合の働きと限界
- 国際連合が描く「国際社会」とは?
紛争や主張の相違を武力、暴力で決着しようとしない、
権力をもつものが、抑圧、弾圧をしない、
公平、公正(社会正義)が保証された社会 - 平和、正義、人権尊重
-
世界の多様性と国際連合 世界のほとんどの国が加盟する国際組織→
国と国の間の平等と国際協力 ⇔ 格差(経済、社会、政治、軍事)
すべての人の尊厳と人権の尊重 ⇔ 差別
- 国際連合が描く「国際社会」とは?
- 国連で初めてグローバル化した人権
- 普遍的価値としての人権:
人権の国際基準(グローバル基準でもある)は、国際連合に始まる(1945年)
それまでは、一面的、部分的(憲章前文、第1条3項、第55条)世界人権宣言 (1948年)「人権の普遍的宣言」第1条
「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない。」 人の尊厳:人は、一人一人が、人であるがゆえに「かけがえのない」,「尊い」,「大切な」もの。 人権の普遍性、平等性:人権は、「だれでも」、「どこでも」、「いつでも」、「同じように」 - 世界人権宣言は、人権の国際基準の土台:
- 国を越えて、人種、性別、信条、出自、身分などの別なく、だれにも、平等に保障される人権という原則を定着させた。
- 後に続く国際人権条約、宣言文書の指針となった。
- 普遍的価値としての人権:
- 国連の人権分野の新たな展開
のひとつの例
グローバル化した経済、企業活動の現状/国際人権基準に沿った原則の採択
→「ビジネスと人権に関する指導原則」:国連「保護、尊重及び救済」 枠組み (2011)- 国家には人権を保護する義務がある。
- 企業には人権を尊重する責任がある。
- 人権が侵害された場合には、救済を受けることができる
世界の同様な動き
- グローバル・コンパクト(2000年7月):人権、労働、環境、腐敗防止の分野における10原則
- OECD多国籍企業ガイドライン(1976年、2000年と2011年5月改訂):人権に関する章を追加
- ISO26000 (2010年11月):社会的責任を包括的に扱う。
- 国際連合の限界
主権国家が集まって作った国際組織→「国益」によって行動する加盟国- 深刻な問題、状況に対する対処で合意が困難。「議論の場」に終わることもある。
- 強制力・執行力を持たないことが多い。
- グローバルな理念を実現するための国連機関を求めて設置されたもの:
高等弁務官(難民、人権)/国連開発計画(UNDP)/国連児童基金(UNICEF)/国連環境計画(UNEP)/国連平和維持軍(???)/国連専門機関(ILO、WHO、FAO、など) - グローバル市民教育:
2012年9月国連事務総長による「グローバル教育第一イニシアティブ」で挙げられた3重点課題の一つ
- グローバル市民教育の目標
- 地域社会でそしてグローバルな規模で
- より公平で公正な社会、平和、寛容、安全で持続可能な社会を実現するために
- 積極的に貢献できる人を育てることである。
- グローバル市民教育の「グローバル」:地球に住むすべての人と社会を視野に考える。
- 「普遍的な価値」とは、「差異を越えて、国の壁を越えて、互いに協力し合うこと、世界中の市民が共に生きること」↔︎競争に勝ち抜くことや特定の国の利益を優先すること
- グローバル市民とは
- ①グローバル課題と国際社会情勢の知識と理解 ②普遍的価値の理解と尊重、コミットメント③思考力、分析力、問題解決能力、決断力の体得 ④言語の習熟 ⑤異文化を超えたコミュニケーション力 ⑥行動力
-
グローバル教育と日本の学校教育
生徒の自主性、意見表明、創造性、コミュニケ-ション力
グローバル市民教育−普遍的価値を基礎とする世界基準の知育
- グローバル市民教育の目標
- グローバルな視点から考え行動するために、あなたはどこから世界を見ていますか?
- グローバルに貢献できる手段、条件を備える
- 理解、交流のためにー「ことば」を学び、みがく。
- 自分のアイデンティティ、文化的精神的ルーツを確認する。
- 働くためにー使える知識、技能、経験、資格を獲得する。
- 知識
- 普遍的価値の理解と尊重。
- グローバル社会に生きる市民としての教養(文化、歴史、芸術、思想・哲学、文学、社会・経済・政治の仕組みなど)の体得。
- 科学技術や知識の獲得。
- 普遍的価値とは? 平和/人権/社会正義/公平/持続可能性
- 必要な能力は→ 思考力/分析力/問題解決能力/決断力
- コミュニケーション力→ 言葉の習熟だけでなく/異文化、多様な背景を持つ人との交流、対話、相互理解、協力・協働ができる力
-
行動力→ "Think globally. Act locally."
グローバルな視点(普遍的価値観)から、理解する。考える。判断する。行動をおこす。
例として:環境問題、地球資源の保全
2015年、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で出されたグローバル課題と
地域の日常生活で自然環境保護に貢献し、資源保護の活動に関わること は密接に関連する。
- グローバルに貢献できる手段、条件を備える
- おわりに
- グローバル化における普遍的価値の意義
- グローバル社会にふさわしい人を育てるための グローバル市民教育
- グローバル社会にふさわしい教育を行うよう、学校教育の変革に期待 SGH/GLHS
- 積極的に貢献できる人を育てることである。
- グローバル市民教育が目指す目標
- 普遍的価値(平和、人権、社会正義、公平、持続可能性)を共有する人たちが、
- 一人ひとりのアイデンティティを維持し、それぞれの能力を生かしながら、
- 地域レベル、国レベルそして国際レベルで、
- 自由な独立した個人として、コミュニティに貢献することができる。
- 平和で、人が大切にされ、公平・公正が担保される、持続可能な社会づくり
- グローバル教育は生徒のためになるのか?
「生徒のため」とは? それぞれの人生の目標によって、「ためになるか」どうかが決まる。
グローバル教育は、- グローバルな課題を意識し、それに取り組みながら、
- よりよい社会づくりに貢献することで
- 幸せに生きることができる人を育てることを目指す。
この目標が、人生の目標として共有されるのなら、グローバル教育は生徒の「ためになる」。
- グローバル化における普遍的価値の意義