活動記録

Report

<課題研究>
1年生対象 「国際理解」特別授業(2)
多様な立場と合意形成について学ぶ

Special Lesson for the 1st-year students(2)

2016年9月13日・14日

多様な立場と合意形成について学ぶ

1年生科目「国際理解」の2回目の特別授業では、「西淀川の公害問題解決の軌跡から多様な立場と合意形成について学ぶ」をテーマにしました。環境問題を理解する導入として地元の大阪・西淀川における公害と問題解決までの経緯を学習し、ロールプレイを通じて問題の解決には多様な立場の調整が必要なことを理解してもらう授業としました。

講師:栗本知子氏(公益財団法人公害地域再生センター 研究員)
場所:本校図書室

内容:

①導入

  • • 日本はかつて公害列島と呼ばれていた
  • • なぜ西淀川に公害があったのか
  • • 煙が繁栄の象徴であり、校歌にも読みこまれていた。→誇りに思われていた。

②グループワーク

  • 説明
    5つの役割がある
    合意形成を目指す
    状況設定
    全員が納得するまで話し合う
    意見を変える場合には理由をはっきりさせる
    他のメンバーの話をしっかり聞く
    結論を急ぐあまり、または葛藤を避けるため、安易な妥協はしない。
    少数意見は意見を言い難いものだが勇気をもって

  • • 5枚の異なる役割シートを裏向きで引いて役割を決定
  • • 役作りの時間
      • • 役割1の生徒から1周目のセリフをスタート(セリフは1周めまでは決められている)
        • →かなり現実的に意見の遣り取りをしていました。
        • →教材が良く出来ているために、10分間議論が続いていました。

③全体化:グループで出た話を聞き出す

④振り返り

  • 各自でロールプレイから何を学び取ったのかを振返りシートに記入。 →とても集中して書いていました。

⑤まとめ

  • • 「西淀川でも実際にそのような事例があった。」現実はさらにリアルであることを押さえる。
  • • 千里高校国際文化科の目指すものとの関係 多面的な視点、他者との連携・協調・探究、柔軟かつ創造的な提案を行う力
  • • 二項対立でなく、交渉をして和解に持ち込んだことが建設的
  • • 公害対策法制の変遷について

生徒たちの感想:

  • それぞれの立場の人が、自分たちの暮らしを守るために意見を出すから、それを公正に平等にま とめる人はとても難しいと思いました。
  • 簡単に工場を止めてほしいとひとことで言っても、お金の問題や原因が工場でなかったときの責 任問題などたくさんの問題が次から次にでてくるので難しいと感じた。
  • みんな自分の立場があって、それをうまくとりいれるのはとても難しいことだと思った。だから、 市役所など中立の人に頑張ってほしい。
  • それぞれの要望がちがうので合意形成をするのがむずかしいと感じた。自分の意見ももちながら 相手の意見を聞き入れようとするのはむずかしいなと思った。
  • それぞれ違う5つの意見を合意形成させることは簡単なことではないと思った。公害の起こった 町の人がいかに努力してもとの状態に戻したかということがわかった。
  • 公害問題のリアルな争いが少しわかりました。こんなにも難しく大変な問題を何年にもわたって 議論した方々を尊敬しています。その方々がいなければ今の日本はないんだと思いました。
  • 日本の産業の発展の裏には公害問題というのがあって、たくさんの人がその公害により、大変な 思いをしたということが分かり、この発展は、良いことばかりじゃないのだと思いました。日本 の発展ばかりに気をとられずに、周りの人や環境にも目を向ける必要があると思いました。
  • 一番印象に残ったのは今の中国のように昔の日本の空気はとても汚れていて、昼間でも車のライ トをつけていたということです。今の日本では中国の汚染された空気を嫌い迷惑というように報 道しています。日本も昔はそれに近いものだったなら、改善の方法、方針を中国も納得のいく形 で示せたらいいのにと思います。

取り組みを終えて(「国際理解」担当者から):

  • 事前に西淀川の公害問題についてのビデオを見たり、被害者のエピソードなどを学習していたこ とで、特別授業のロールプレイにスムーズに入れたようである。
  • 今回のロールプレイを通じ、多様な立場から物事を捉えることの重要性やその難しさを生徒たち は感じ取ることができたようである。
  • 感想の中には「西淀川公害の解決に至った経緯を知りたい」といったものや中国の環境問題に ついて考察したものもあり、社会問題への探究心の芽生えが感じられる。